竜頭蛇尾 (ドキュメント『Re:演歌』について)


ビデオ録画していた『Re:演歌〜ヒットメーカー達のプロジェクト〜』をようやく見る。(参考記事


先に結論を言います。期待して損しました。 _| ̄|○


千賀プロデューサーが江差追分の大会で目をつけた、13歳の女の子から
デビューに向けての話を断られた(まだ学業に専念させたいという家庭の方針)、という
結末のことではありません。


歌を作る過程も、用意された作品も、結局従来のものを踏襲したようにしか見えませんでした。
その子に歌わせるつもりで吉岡治氏が準備していた歌詞「いのち船」とやらを見た時、
俺は脱力して思わずコケてしまいました。「なんだそりゃ」
大風呂敷広げたわりに、できあがった詩がそれですか、と。
こんな内容を、13歳の女の子に歌わせようと本気で思っていたのでしょうか。
これならまだ、「21世紀にヒットする演歌」として少子化・晩婚化をさりげなく盛り込んだ
神園さやかの「おじいちゃん」のほうが1000倍マシです。


一体何のためのプロジェクトだったんでしょう?
必要なのは、従来の演歌を体現するための道具としての歌い手を発掘することではなく、
まずは今の時代に合った共感できる歌詞を作ることであり、
演歌の要素を残しながらも斬新なメロディとアレンジを作ることではないのですか?


先日の日記にも書いた通り、番組紹介ページの文章の熱さから判断するに
番組の企画意図はすごくよかったと思うんですよ。
街頭インタビューでも、「演歌? 古くさいし、何歌ってるか意味わかんないしー」って感じの
率直な声をちゃんと拾っていましたし。
前半では弦・吉岡・千賀の3氏が熱く理想を語っていて期待したのですが、
後半は、なんかもぉーツッコミどころ満載でした。「なんでそうするの?」
見ていない人にはチンプンカンプンでしょうし、言いたいことがたくさんあるので
後日またまとめて書きます。\(>_<)/


途中、吉岡治氏が、上野アメ横のリズム(演歌専門のショップ)を訪ねた時に
小林店長に語った言葉。


「今いちばん欠けているのはね、聴く歌ね。聴く歌が少なすぎる。
 といって、聴く歌を書いてないわけじゃないんですよ僕らも。
 書いてんだけど、売れないんだよね。やっぱり、まず歌いたがるから」


まさにその通りです。この言葉に、いまの演歌マーケットの問題点、そして
演歌が若い人から誤解を受けている部分が集約されてる気がします。
( この言葉だけを引用したところで、演歌に興味のない人に
  その意味を100%理解してもらうのは難しいと思いますが )


(追加)
吉岡氏の名誉のために言っておきますが、氏も十分わかってらっしゃると思うんですよ。
だからこそ今年も、石川さゆり「秋のメルヘン」のような、現代のテーマ(メール等)を
取り入れた、まったく演歌とは違う内容・曲調の作品が生まれたんでしょうし。
あのような曲をあえてシングルとしてぶつけてきたさゆりサンとそのスタッフらの志に、
俺は拍手を惜しまないのですが、残念ながら一般にはほとんど印象に残っていないでしょうし
セールス的にも、“演歌っぽい”他のシングルと比較すればおそらく伸び悩んだはずです。
それが、吉岡氏の言っている「書いてるんだけど売れない」ということなのです。