たまには吼えてみる


今の演歌はカラオケファンにそっぽを向かれたら売れない。
そういう事情は重々承知しているつもり。
それでも、本音の部分では、やっぱり納得できない。


レコード店の店頭や、イベント会場等のオープンなスペースで歌唱キャンペーンする場合、
以下の3点が本当に必要なのか疑問に感じる。


 1.「とても歌いやすい曲なので、皆さん覚えてカラオケで歌ってください」を売り文句にすること。
 2.「カラオケ指導」と称して、客をステージに上げて歌わせること。
 3.会場で、最初から歌詞カード(チラシ)を配ること。


( ※カラオケ喫茶等の閉じた空間ならともかく、
   オープンな場所で 2.をやる歌手はさすがに多くはないけれど )


演歌歌手のキャンペーンに行ったことのない人にはピンと来ないと思うが、ほぼ例外なく
売り出し中の新曲の歌詞が全部載ったカラーのチラシ(ミニパンフレット)が、スタッフによって事前に配られる。
プロフィール等も印刷されているので、通行人に配るチラシとしての役割は大きいし、
用意していないと「なんだ歌詞カードもくれないのかよ」と怒り出す客がいるのも事実。でも。


観客は、歌手が歌っている間も、ずーっと下を向いて歌詞カードの文字を目で追ってるだけ。
だから、詞を耳で聴いて頭の中で情景やストーリーを思い浮かべながら聴く、という
当たり前のことすらできなくなっているのだ。これもカラオケ文化の弊害ではないだろうか。


「いい歌ね」という感想をもらったからといって、喜んでいてはいけない。
それは必ずしも「感動した」という意味ではない。「よかった。私でも歌えそう」程度の意味のほうが近いだろう。


歌手は、ナマの舞台で歌を聴かせて、感動させてナンボのはずだ。
素人のための、ただのカラオケのお手本に成り下がってはいないか。


「せっかくですから、今だけは歌詞カードを閉じて、詞の内容に耳を傾けて私の歌を聴いてください」
そう言える歌手がいてもいいのではないだろうか。


今の演歌はカラオケファンにそっぽを向かれたら売れない。
そーゆー事情は重々承知しているつもり。えぇ、承知してますとも。