協力店の店頭で買われさえすればよいのであって


CDを出すという活動をしている以上、歌手にとって避けては通れないのがランキングの話題。
そこに一石を投じる出来事が先週から起こっています。


経緯について、よくまとめてくださっているサイトがあります。
問題が公になった直後の12/18分、12/19分あたりの文章は、正直言って
感情的な部分や義理人情に拠った記述も目立つ気がしたのですが
その後だんだん冷静になってきたようで、今日の12/25分はヒジョーに面白いです。↓


音楽配信メモ」(津田大介氏)
http://xtc.bz/index.php?ID=399
http://xtc.bz/index.php?ID=400


これまで何となくうやむやにされてきた問題にこれほど深く斬り込み、
しかもここまで客観的な証言を揃えてまとめた文章は、極めて珍しいのではないでしょうか。
非常に納得のいく材料を揃えてくれていると感じます。


個人的には、音楽業界でそれが長年受け入れられているという事実を思えば、
少なくとも業界内から文句が出ない程度には正しいんじゃないの?と思っています。


集計する会社の定めたルール上で、暗黙の了解のもとに
レコード会社、小売店、ファンの“努力”によって“動かす”ことができるもの。
それをわかったうえで我々は、人気の一面を知ることができる(一面のみ、ですが)
判断材料の一つとして、参考にしていればいいのでは。


ただし。
演歌のCD・カセットについては、あまり売上の実態が十分に反映されてはいないのかも。(+_+)
「これだけ売れているのにチャートに反映されない」という声を時々聞きますし…。
キャンペーンやコンサートの即売で局地的に売れる枚数が売上の多くを占める演歌は
集計されづらい、とどこかで読んだことがあります。
同じCDでありながら、おそらく、ポップスとはまったく違った商品であるかのごとき
売られ方・買われ方をするものなのです。


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(追記)


ある程度想定していたとはいえ、「音楽配信メモ」さんから
リンクされてしまいましたので(^_^;)、補足しておきます。


ここで言う「納得のいく材料」というのは、
「あれは操作されてるんでしょ?」という世間の疑念に対するカウンターとして


・実は意外とけっこう信頼性に足る集計方法がとられていること
・不自然な動きがあったとしても、それは集計する会社が操作したのではなく
 小売店やレコード会社がとった行動による結果であるかもしれないこと


…などを推測するに十分な、客観的な解説や、関係者の証言が
バランスよく揃えられている、という意味です。


争点の一つとなっているのは、
「予約数を含まない、実売数だけが小売店から報告され集計されている」
というのがホントなのかどうか、ということだと思うのですが
これは、集計する会社にとっては、「みんな守ってるよね?」と呼びかけて
当然守られていることが前提のルール(≒事実)なのでしょう。


ただし、一部の小売店が何らかの理由で、あるいは昔からの慣習で
(勘違いしたまま)予約数を含めて報告してしまっているということが
実際の現場で起きているのでは?…という気が
音楽配信メモ」の一連のエントリを読んだ結果、ムクムクと湧いてきました。(^_^;)


いずれにせよ、初登場時の集計方法ばかりに論点が置かれている気がします。
じゃあ、その後じわじわと人気が出たり、テレビ出演をきっかけに売上が伸びたりする
細かいチャートの動きは、出荷数や予約数だけでは到底説明しきれないのでは?
というのが素朴な疑問です。


それから、演歌のCD・カセットの売上が反映されづらいのは、
「サンプル店の」「店頭で売れた数」をもとに推計する、というシステムをとっている以上、
仕方のないことかもしれない、と思っています。


全国的にどこを見ても売れ行きが止まっているのに、ある日突然
局地的に起こる売上の伸びを、仮に「イベント特需」と呼ぶことにします。
たとえば、アイドルが開いた握手会とか、コンサート会場とかで大量に売れるケースです。
でも、それをそのまま通常通りにサンプルとして計上していたら
実際に全国で売れた枚数を正しく推計することはできなくなるわけで、
そういう局地的に発生した“異常値”をはじいて修整するノウハウがおそらくあるのだと思います。


でも、演歌というジャンルは、そういう「イベント特需」こそが売上の大半を支えているのです。


演歌歌手がシングルを出す周期は、だいたい半年から一年。
彼らはその間、最新シングルのCD・カセットを一枚でも多く売ることを至上命題に活動します。
発売直後の数週間や、テレビ出演時などには高い売上を示しますが、
それ以外の平時はチャート圏外で、数字の上では「売上枚数ゼロ」だったりします。


(※売上枚数がつくのは200位までですので。
  これでも数年前までは100位までだったからマシにはなったはず)


でも、その間もまったく売れていないわけではなく、歌手が各地をまわって
お客さんの前で直接歌う、キャンペーン&即売会での売上が続いているのです。
一ヶ所につき、せいぜい数十枚から数百枚。それではチャートに入るはずもありません。
でも、それを半年から一年続けて、最終的に総売上が数万枚に達すればいいのです。
つまり 演歌というジャンルは、歌手の行く先々で局地的に起こる
ごく小さな「イベント特需」の連続で、売上枚数を積み重ねていくもの
だと言うことができます。
チャート上の数字と、実際に売れたはずの枚数が大きく異なるのは
これが大きな原因となっていると思われます。


まぁ、レコード会社の発表する「○万枚突破!」というコメントも
たいてい大幅に水増しされているものだと思いますけど。(-_-;)


アーティスト本人が直接お客さんの前に行かずとも、テレビや雑誌で情報を得たファンが
CDショップに来て指名買いしてくれるポップスとは、まったく売れ方が違うものなのです。


( もちろん、もともと人気・知名度のあるベテラン歌手の楽曲や、
  カラオケファンに受け入れられて、楽曲が一人歩きを始めている場合は
  ほうっておいても売れていくので、この限りではありません。
  それから忘れてならないのは、レコード店さんの努力。
  「なんかいい曲ない?」と尋ねてくるお客さんの嗜好に合わせてオススメしたり、
  いい曲をもっと広めたいと、積極的にコーナー展開したりするからこそ、売れていくのです )