氷川きよしはすべての女性ファンを乙女に変えてしまう


氷川きよしのコンサート警備をした時のこと (ハイエナズクラブ)
 http://hyenasclubs.org/?p=12765


 →(参考)はてなブックマークの反応
   http://b.hatena.ne.jp/entry/hyenasclubs.org/?p=12765


(※新曲「ちょいときまぐれ渡り鳥」に関する当ブログの記事はこちらをご覧ください)


なんだか注目されて盛り上がっているようですので
いわゆるニュースサイトではありませんが紹介させていただきます。↑
うーん。妙にリアルなので、フィクションじゃなくて実体験なんだろうなぁ。


コンサート警備スタッフ。見たことありますよね?
常にステージに背を向け「僕こんなアーティストに興味ありませんから」という顔をして
立ったまま、あるいは体育座りをして、地蔵のようにほとんど動かない連中です。
通常の演歌コンサートではまず見かけたことがありませんが
(観客はおとなしく座って見ていますし、直接花束等を渡せるプレゼントコーナーもありますので)
日本武道館や国際フォーラムといった大きな会場で公演をやる人気歌手の場合は必要でしょう。
興奮したファンが前に殺到したり、演出を無視してステージに突進して直接花束やプレゼントを渡そうとするのを
体を張って止めるのが役割です。大抵はアルバイトだと思います。(座席の案内係と兼ねていることも)
この漫画では白いTシャツを着たラフな格好ですが、
屋内コンサートの場合は、黒っぽいスーツを着るのが普通ではないでしょうか。


さて、この漫画、徹底して「コンサート警備として経験した視点」で描かれており、
観客の様子を極めて客観的に見ています。
作者が女性客たちを「ババア」と見下しているようにとれる言葉にカチンと来る人もいるでしょう。
でもこれは、自分の母親よりもはるかに年上の、知り合いでもなんでもない他人の女性の集団を
記号的に捉えているだけなので、深い意味も、悪意もないと思われます(たぶん)。
女子高生をJKと呼ぶのと同じです。


最初は、動物園の動物を見るがごとく「どんな表情を見せてくれるんだい?」と
他のコンサートの時のようにやや上から目線で見ていたにもかかわらず
コンサートが始まると、熱狂し、顔を紅潮させ、あられもない表情を見せる
乙女と化したファンたちのパワーを直にビリビリと感じて感動してしまっています。
蛭子能収さん的な絵柄で多少デフォルメされていますが(笑)、
けっして作者は彼女たちを「気持ち悪い」とは思っていません。
さらには、彼女たちにそうさせてしまうほどの絶対的な存在感を放つ氷川きよしに対して
畏敬に似た感情すら覚えているのが面白いところですね。


この漫画の中の氷川きよしは、足元だけしか描かれておらず、顔は見えません。
何せ、コンサート警備は決してステージのほうを振り返ってはいけないのですから。
そのため、氷川きよしのミステリアスさ、神格化された存在感が、より強調されています。


その一言でファンを熱狂させる、淡々とフキダシに書かれた
「やだねったらやだね」の文字は、まるで必殺の決め台詞、神の啓示の言葉のよう。
本当はステージ上の本人だってノリノリの笑顔で楽しく歌っているでしょうに、
その描写がスッポリ抜けているのは、仕方ないにしてもちょっと違和感かも。
2回目の「きよし!」のコマで、女性たちがみんな若返って描かれているのは、感動的ですらあります(笑)。
うんうん。みんな氷川きよしに恋して、決して比喩でも何でもなく、文字通り心も体も若返るんだと思います。
何歳になっていても、熱い想いを、生きる歓びを思い出させてくれる。
ここまでさせてしまう「歌」って、「人気歌手」って、すごいですよね。


まったく無関係の、間に立っているだけの警備バイトくんでさえ元気をもらったというのですから、
ましてやステージ上にいて声援を一身に受ける歌手は、その比ではないのでしょう。
よく、演歌歌手はステージトークで「皆さんから元気をもらいました!」と決まり文句のように言いますが、
それは必ずしも社交辞令ではないのかもしれません。


こういう客観的かつ新鮮な目で、演歌シーンを切り取って描いてもらえたのがうれしく思います。(^^)


…とキレイにまとめようかと思いましたが、この漫画を書いた「盛岡」というライターさん(?)は
これまでにネットでヒジョーに個性的な文章や漫画を発表している方のようです。絶対に検索しちゃダメだぞ!


「ちょいときまぐれ渡り鳥」Aタイプ 氷川きよし 「ちょいときまぐれ渡り鳥」Aタイプ c/w「明日への道」 氷川きよし