氷川きよし15周年コンサート 日本武道館周辺雑感(後編)−堂々と売られる非公式グッズと写真−
※前編は、こちらをご覧ください。
・氷川きよし15周年コンサート 日本武道館周辺雑感(前編)−腰の曲がったおばあちゃんまで集結させる求心力−
九段下の駅の地上出口から武道館にかけての歩道には、露店が4、5つ並んでいました。
そこで売られているのは、氷川きよしの生写真のセット、ポスターなど。
しかしこれらは公式グッズではありません。そう、非公式です。海賊商品です。バッタもんです。
アイドル系のコンサートの会場周辺にはこういう露店が出現するようです。
露店の前には人だかりが。皆さん興味深そうに眺めています。
ズラリと並べて貼られたステージ写真。最近おこなわれた地方公演のものをはじめ、
不思議なことに、この前日の武道館公演のものも早々にありますし、さらには、おぉなんと
恐ろしいことに、さっき終わったばかりの昼公演のステージ写真が、もう売られていたりするんです!
どうやって用意してるんでしょう?(-_-;)
「昨日」と書かれています。ペガサスに乗った写真もありましたので、確かに前日の武道館を撮ったもののようです。モザイクかけるとよくわかんないですね…。
私もそれなりに仕事でコンサート撮影をしてきたので、ステージで歌っている歌手の写真を
客席からキレイに撮るのがいかに難しいかは、身をもって知っています。
人間の目では普通に見えても、ステージは屋外や室内と違って圧倒的に光量が足りませんので、
コンパクトデジカメや、ましてやスマホのカメラなどでは絶対に無理です。
売られていた写真は、私が見る限り、一眼レフカメラとそれなりのズームレンズを使わなければ
撮れないクオリティでした。たとえカメラを隠して持ち込んでも、撮影禁止の客席でそんなものを構えたら
絶対に係員にもバレるし、周囲からも白い目で見られると思うんですが…。本当に謎です。
8枚セットで1000円とか。大きいサイズの写真が3枚セットで1000円とか。
さらに、ステージではなく、楽屋口から会場入りする時の様子を撮ったものまでありました。
ここまでくると、盗撮というかパパラッチですね。
こういうものを売るのは、個人的にはどう考えても明らかにクロだと思いますし
「肖像権を食い物にするハイエナどもめ!見敵必殺!」と言いたいところです。
でも、昔からこういった非公式のアイドルの生写真を堂々と売っている常設店は各地にあり
摘発されることなく営業しています。何らかの大人の事情で黙認されているのかもしれません。
けっして「悪認定!」とはいかないのです。
隠し撮りをなりわいとする専門のカメラマンがいるのかもしれません。
会場に出入りする所をひたすら待ち構えたり、苦労して客席にカメラを持ち込んだりして
撮影し、そのデータを露天商に渡して報酬を得る。
露天商はそれを超特急で大量にプリントし、会場周辺で販売して利益を得る、と。
そんな涙ぐましい努力をして、自分たちで撮った写真を商売に使っているのであれば
百歩譲って考えて、それはそれで、一つのビジネスの形かもしれません。でも…。
個人的に許せないのは、雑誌のグラビアをコピーし、
ポスターなどの商品に加工して売っているグッズです。
雑誌掲載時の「氷川きよし」のタイトル文字がそのまま残っているものも。
残念ながら私には出典がほとんど分かりませんでしたが、
たぶん全部、何かの雑誌のページからコピーしたものだと思います。
例えば下の写真、上段の左から2番め、赤と白の羽根をバックに散りばめた写真は
「歌の手帖」11月号のグラビアですね。↓
見る人が見れば、いつ、何の雑誌に載っていたものか、分かるのではないでしょうか。
これ、出版社が訴えれば絶対に勝てると思うんだけどなぁ。
ダフ屋は迷惑防止条例で警察が取り締まれるのに、こういう露天商はなぜ野放しのままなんでしょう?
何気なく見ている雑誌のグラビア写真一枚をとっても、多くの労力がかかっています。
タレントのスケジュールを調整し、スタジオを借り、照明機材や撮影機材をセットし、
スタイリストがヘアメイクをし、技術を磨いたプロのカメラマンが撮影対象人物と
信頼関係を築きながら撮影して、はじめて自然な笑顔やいきいきとした表情を引き出せます。
そうやって撮影した数百枚の写真の中からよいものを選び、
さらにパソコンで補正して、編集者とデザイナーがレイアウトを考えて、やっと雑誌に載るのです。
そんなふうに、多くの人の時間と労力をかけて撮影したものを
何も考えずにスキャンして、引き伸ばして、大量にコピーして、ラミネート加工しただけのものを
さも自分が作ったような顔をして、ポスターとして一枚800円で売る。
そんな海賊商品を、私は許せません。雑誌を作っている人たちの顔を知っているのでなおさらです。
これらの露天商を糾弾するつもりはありません。(軽蔑の視線を送るだけです)
「絶対買ってはダメです!」とファンの皆さんに訴えたいのでもありません。
前述したように、大人の事情があるのかもしれませんし、第三者がとやかく言えることではないと思います。
被害届を出したり、訴えたりできるのは、タレントの肖像権を守る所属事務所や、著作権を持つ出版社だけでしょう。
私も昔、女性アイドルの生写真を買った経験がありますし、こういった非公式グッズや写真が
欲しくなる気持ちはわかります。そこでしか手に入らない写真や、公式グッズにはない
ファンのニーズに応えた商品すらあるでしょう。きちんと作ってあり、見た目も遜色ありません。
でも、歌手を本当に応援したいのであれば、買わないことをお薦めします。
公式グッズを買えば所属事務所の利益になりますが、お察しの通り、こうした海賊商品は
事務所にとって何の利益にもなりません。氷川きよしにとって何のプラスにもならないのです。
グラビアの盗用は、人の褌で相撲を取る悪質な行為であり、雑誌にとって著作権侵害です。
こちらは、タオル、バッグ、カードケース、キーホルダー、カレンダー、クリアファイルなどを売っている露店。
15周年やHKの公式ロゴマークが印刷されていますが、明らかに非公式商品です。
熱心に露店を覗きこんでいるお客さんも、海賊商品だと知ったうえで
冷やかしで見ているだけで、買わない人がほとんどだろうとは思います。
でも、会場の公式グッズ売場に着くよりも前に目に入りますし、つい買ってしまいますよね。
もし知り合いに、非公式であることを知らずに買ってしまったファンがいたら、
それがどういうものなのか、こっそり教えてあげてください。
買うのは自由ですし、個人的に楽しむのは構わないと思います。
でもけっして他人に自慢できるものではないということを。